「理学療法と作業療法の違いって、ぶっちゃけどんな感じなの?」そう疑問に思っている方も多いはず。どちらもリハビリテーションの分野で活躍する専門家ですが、アプローチの仕方や目的が少し異なります。この二つの違いを理解することで、あなたがもしリハビリを必要とする場面に遭遇したときに、どちらの専門家がよりあなたのニーズに合っているのかが分かりやすくなるでしょう。

「動ける」ようになるための理学療法

理学療法士は、主に身体の「動き」そのものの回復を目指します。例えば、病気や怪我で歩くのが難しくなった方、関節が痛くて動かせない方に対して、運動療法や物理療法(電気刺激や温熱療法など)を用いて、筋肉や関節の機能を改善させ、日常生活の基本的な動作(歩く、立つ、座るなど)ができるようにサポートします。

理学療法の主な目的は、身体機能の回復です。具体的には、以下のような点に重点を置きます。

  • 筋力や関節の可動域の改善
  • バランス能力や協調性の向上
  • 痛みの軽減
  • 歩行能力の回復

理学療法士は、あなたの「動ける」という基本的な能力を取り戻すことに、特に力を注ぎます。

理学療法の具体的なアプローチ方法をいくつかご紹介しましょう。

  1. 運動療法:ストレッチ、筋力トレーニング、バランストレーニングなど
  2. 物理療法:温熱療法、電気療法、超音波療法など
  3. 徒手療法:マッサージや関節モビライゼーション(関節の動きを滑らかにする手技)

「生活できる」ための作業療法

一方、作業療法士は、より広範な「生活」に焦点を当てます。病気や怪我、あるいは加齢によって、これまで当たり前にできていた日々の活動(食事、着替え、料理、仕事、趣味など)が難しくなった方に対して、その人が「自分らしく」生活を送れるように支援します。作業療法士は、単に身体の動きを改善するだけでなく、その動きを「生活」の中でどのように活かしていくかを重視します。

作業療法の対象となる「作業」は、多岐にわたります。以下に例を挙げます。

  • 日常生活動作(ADL):食事、入浴、着替え、排泄などのセルフケア
  • 手段的日常生活動作(IADL):料理、洗濯、買い物、金銭管理、交通機関の利用など
  • 仕事や学業、趣味活動

作業療法士は、あなたが「生活」を営む上で必要な様々な活動を、可能な限り自分自身の力で行えるようにサポートします。

作業療法士がどのようにサポートするか、表にまとめてみました。

アプローチ 説明
活動分析 、その人が行いたい活動を細かく分析し、何が困難なのかを特定します。
環境調整 、自宅や職場の環境を、より活動しやすくするための工夫を提案します。
自助具の活用 、スプーンや箸、ボタンのかけ外しを助ける道具など、便利な道具の使い方を指導します。
代償動作の獲得 、失われた機能の代わりに、他の体の部分や方法を使って活動を行う練習をします。

アプローチの違い:身体機能 vs. 生活活動

理学療法と作業療法の最も大きな違いは、アプローチの主眼です。理学療法は、失われた身体の「機能」、つまり「動く」という側面を回復させることに重点を置きます。例えば、転倒して骨折した方の足の筋力を回復させ、スムーズに歩けるようにすることを目指します。

一方、作業療法は、回復した身体機能や残存機能を活用して、より具体的な「生活」を送るための支援を行います。先ほどの例で言えば、歩けるようになった方が、家の中で安全に移動し、買い物に出かけ、自分で食事を作り、趣味を楽しむといった、一連の生活活動をスムーズに行えるようにサポートします。

この違いを理解するためには、以下の点を比較すると分かりやすいでしょう。

  • 理学療法: 運動機能の回復、筋力・関節可動域の改善、痛みの軽減
  • 作業療法: 日常生活動作の遂行、社会参加、趣味活動の継続

どちらの療法も、最終的には「その人らしい生活」を取り戻すことを目指している点は共通していますが、その道筋が異なります。

対象とする疾患や状態

理学療法と作業療法は、それぞれ得意とする領域や、よく関わる疾患・状態があります。もちろん、重複する分野も多いですが、全体的な傾向として理解しておくと良いでしょう。

理学療法は、整形外科領域(骨折、捻挫、腰痛、肩こりなど)、神経内科領域(脳卒中後の麻痺、パーキンソン病など)、呼吸器・循環器領域(肺気腫、心不全など)で多く関わります。これらは、身体の動きや姿勢、呼吸、循環といった、基本的な生命維持や身体活動に関わる機能の回復が中心となる場合が多いです。

作業療法は、理学療法が関わる分野に加え、精神科領域(うつ病、統合失調症など)、発達障害領域(ADHD、自閉症スペクトラムなど)、認知症領域など、より幅広い分野で活躍します。これらの分野では、思考力、集中力、対人関係、感情のコントロールといった、より高次の精神機能や、社会生活への適応が重要となるからです。

両方の療法が連携して、より包括的なサポートを提供することも一般的です。例えば、脳卒中後の患者さんに対して、理学療法士が歩行訓練を行い、作業療法士が自宅での調理や入浴の練習をする、といった連携が考えられます。

具体的なリハビリテーションの進め方

リハビリテーションは、単に決まったメニューをこなすだけではありません。一人ひとりの状態や目標に合わせて、オーダーメイドで進められます。

まず、理学療法士と作業療法士は、それぞれ専門的な評価を行います。理学療法士は、関節の動きや筋力、バランス能力などを評価し、作業療法士は、日常生活動作や、その人が行いたい活動の遂行能力を評価します。

これらの評価結果をもとに、患者さん本人やご家族とも相談しながら、具体的な目標を設定します。例えば、「退院までに一人でトイレに行けるようになる」という目標であれば、理学療法士は筋力強化や歩行練習、作業療法士はトイレでの衣服の着脱練習や、必要に応じて手すりの設置などを検討します。

リハビリテーションの過程では、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて目標やアプローチ方法を修正していきます。 この柔軟な対応こそが、リハビリテーションを成功させる鍵となります。

両者の協力体制

理学療法と作業療法は、しばしば協力して患者さんのリハビリテーションにあたります。病気や怪我からの回復は、単一の機能回復だけでなく、生活全体の質の向上を目指す必要があるため、両方の専門家の視点が不可欠だからです。

例えば、事故で下肢を失った方の場合、理学療法士は義足を使った歩行練習や、残った足の筋力強化を担当します。一方、作業療法士は、義足をつけて安全に自宅内を移動する方法、入浴や着替えの工夫、さらには社会復帰に向けた職業訓練や趣味活動の再開などをサポートします。

このように、両者は互いの専門性を尊重し、情報を共有しながら、一貫したリハビリテーション計画を立てていきます。 チーム医療の中で、理学療法士と作業療法士は、患者さんが再び活動的な生活を送れるように、欠かせない存在です。

まとめ:あなたの「なりたい自分」を支える専門家

理学療法と作業療法の違い、お分かりいただけたでしょうか?理学療法は「身体を動かす」ことに、作業療法は「生活を営む」ことに、それぞれ焦点を当てていますが、どちらもあなたの「できる」を最大限に引き出し、「なりたい自分」を実現するための強力なサポーターです。もしリハビリが必要になったら、これらの違いを参考に、ご自身の状況に合った専門家と相談してみてください。

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