「甲状腺」と「副甲状腺」は、どちらも首のあたりにある小さな臓器ですが、その機能や役割には大きな違いがあります。この二つの臓器の「甲状腺 と 副 甲状腺 の 違い」を理解することは、私たちの体の健康にとって非常に大切です。

甲状腺と副甲状腺、どこにある?

まず、場所から見ていきましょう。甲状腺は、喉仏の少し下あたりに、蝶が羽を広げたような形をして位置しています。一方、副甲状腺は、この甲状腺の裏側に、米粒くらいの大きさが通常4つほどくっついています。見た目も大きさも違えば、それぞれの働きも全く異なるのです。

甲状腺の主な仕事は、体の新陳代謝をコントロールするホルモンを作ることです。このホルモンは、私たちが活動するためのエネルギーを作り出したり、体温を調節したりするのに不可欠です。 この甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、体重の増減、疲労感、気分の落ち込みなど、様々な体調不良の原因となります。

一方、副甲状腺は、体の中のカルシウムやリンの量を調整するホルモンを出しています。これらのミネラルは、骨や歯を丈夫に保つだけでなく、筋肉や神経が正常に働くためにも重要です。

  • 甲状腺:新陳代謝の調節
  • 副甲状腺:カルシウム・リンの調節

甲状腺の働きをもっと詳しく

甲状腺が作っているホルモンは、「サイロキシン」と「トリヨードサイロニン」という2種類が主です。これらのホルモンは、体の細胞一つ一つに働きかけ、エネルギーを作り出すスピードを速めたり遅くしたりしています。例えば、寒い時には体温を上げるためにホルモンをたくさん出し、暑い時には少なくするなど、体のコンディションを整えています。

甲状腺の働きは、脳の下垂体という部分にある「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」によってコントロールされています。血液中の甲状腺ホルモンの量が少なくなると、下垂体からTSHが出て甲状腺を刺激し、ホルモンを増やすように促します。逆に、ホルモンが多すぎると、TSHの分泌が抑えられます。この仕組みを「ネガティブフィードバック」といいます。

甲状腺の病気には、ホルモンが過剰に作られてしまう「バセドウ病」や、逆にホルモンが不足してしまう「橋本病」などがあります。それぞれの病気によって、症状や治療法も異なります。

  1. バセドウ病:甲状腺ホルモンが過剰
  2. 橋本病:甲状腺ホルモンが不足

副甲状腺の働き、カルシウムの秘密

副甲状腺から分泌されるホルモンは「副甲状腺ホルモン(PTH)」と呼ばれます。このPTHは、血液中のカルシウム濃度が下がった時に、骨からカルシウムを溶かし出したり、腎臓からカルシウムの吸収を増やしたり、腸からのカルシウム吸収を助けるビタミンDの働きを活性化させたりすることで、血液中のカルシウム濃度を一定に保つ役割を担っています。

カルシウムは、骨や歯を作るだけでなく、血液が固まるのを助けたり、筋肉を収縮させたり、神経の情報を伝達したりと、私たちの生命活動にとって非常に重要なミネラルです。もし、血液中のカルシウム濃度が低すぎると、手足のしびれやけいれんなどを引き起こす可能性があります。

逆に、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎてしまいます。これを「高カルシウム血症」といい、吐き気、食欲不振、便秘、腎臓結石などの症状が現れることがあります。また、骨からカルシウムが溶け出しすぎて、骨がもろくなる「骨粗しょう症」の原因にもなり得ます。

ホルモン 主な働き 関係するミネラル
副甲状腺ホルモン (PTH) 血液中のカルシウム・リン濃度を調節 カルシウム、リン

甲状腺と副甲状腺、病気との関連

甲状腺と副甲状腺は、それぞれ異なるホルモンを分泌していますが、どちらかの機能に異常が起きると、全身に影響が出ることがあります。例えば、甲状腺機能低下症(橋本病など)では、新陳代謝が低下し、体がだるくなったり、体重が増えたりすることがあります。一方、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、新陳代謝が活発になりすぎて、動悸がしたり、体重が減ったりすることがあります。

副甲状腺の病気も、カルシウムやリンのバランスを崩すことで、骨の健康に影響を与えたり、神経や筋肉の機能に問題を引き起こしたりします。特に、副甲状腺機能亢進症は、骨粗しょう症や腎臓結石のリスクを高めることが知られています。

これらの病気の診断には、血液検査でホルモン値やカルシウム値を測定したり、超音波検査で臓器の形や大きさを確認したりします。早期発見と適切な治療が、健康維持のために大切です。

甲状腺と副甲状腺、互いの関係性は?

甲状腺と副甲状腺は、解剖学的には近い位置にありますが、ホルモンの種類や分泌される場所、そしてその働きは全く異なります。しかし、どちらも「内分泌器官」という、ホルモンを血液中に分泌して体全体に作用させる臓器に分類されます。そのため、どちらかの機能に異常が起きた場合、他の内分泌器官にも影響が及ぶ可能性はあります。

例えば、甲状腺の病気の治療で手術を行う際に、誤って副甲状腺も一緒に摘出してしまうと、副甲状腺ホルモンの分泌が止まってしまい、深刻なカルシウム不足を引き起こすことがあります。そのため、手術の際には細心の注意が払われます。

このように、普段は別々に働いているように見える二つの臓器ですが、お互いの存在を意識しながら、私たちの体を健康に保つために協力しているとも言えるでしょう。

  • 解剖学的位置は近い
  • ホルモンの種類と働きは異なる
  • どちらも内分泌器官
  • 一方が傷つくと他方に影響が出る可能性も

それぞれの検査方法

甲状腺の機能を知るためには、主に血液検査が行われます。甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の量を測ることで、機能が亢進しているか低下しているかを判断します。また、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量も、甲状腺の働きを間接的に知る上で重要です。さらに、甲状腺に腫れやしこりがないかを確認するために、超音波検査(エコー検査)がよく行われます。必要に応じて、細胞を採取して調べる穿刺吸引細胞診が行われることもあります。

副甲状腺については、血液検査でカルシウム、リン、そして副甲状腺ホルモン(PTH)の値を測定します。これらの数値から、副甲状腺の機能異常が疑われます。また、画像検査としては、副甲状腺シンチグラフィーやCT検査、MRI検査などが、副甲状腺の腫瘍や肥大を見つけるために用いられることがあります。

それぞれの検査は、疑われる病気や症状によって使い分けられます。医師はこれらの検査結果を総合的に判断し、診断を下します。

  1. 甲状腺:血液検査(FT3, FT4, TSH)、超音波検査
  2. 副甲状腺:血液検査(カルシウム, リン, PTH)、画像検査(シンチグラフィー, CT, MRI)

まとめ:健康な体づくりのために

甲状腺と副甲状腺は、それぞれ異なる、しかし私たちにとって欠かせない役割を担っています。甲状腺は新陳代謝を、副甲状腺はカルシウムバランスを調整し、私たちの体を健康に保つために日々働いています。この「甲状腺 と 副 甲状腺 の 違い」を理解し、もし体の不調を感じたら、早めに医師に相談することが大切です。健康な毎日を送るために、これらの小さな臓器にも目を向けてみましょう。

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