「便に血が混じる」「お尻が痛い」といった症状が出たとき、多くの人が「痔かな?」と思うかもしれません。しかし、これらの症状は、実は「大腸がん」の可能性も示唆していることがあります。大腸がんも痔も、お尻や腸に関連する病気ですが、その原因や性質、そして治療法は全く異なります。 大腸 が ん と 痔 の 違い を正しく理解しておくことは、早期発見・早期治療のために非常に重要です。

原因と症状から見る大腸 が ん と 痔 の 違い

まず、原因から見ていきましょう。痔は、肛門周辺の血管がうっ血したり、傷ついたりすることで起こる病気です。代表的なものに「切れ痔(裂肛)」や「いぼ痔(痔核)」、「あな痔(痔瘻)」などがあります。これらは、便秘や下痢、長時間の座り仕事などが原因で起こることが多いです。一方、大腸がんは、大腸の粘膜にできたポリープなどががん化することで発生します。遺伝的な要因や、食生活の乱れ、肥満、運動不足などもリスクを高めると言われています。

次に、症状の違いです。痔の主な症状は、排便時の痛み、出血、お尻の腫れや違和感などです。出血は、鮮血であることが多く、トイレットペーパーに付着したり、便器に垂れたりすることがあります。一方、大腸がんの初期症状は、痔と似ていることもありますが、進行すると以下のような症状が出てきます。

  • 便通異常(便秘や下痢を繰り返す、便が細くなる)
  • 血便(黒っぽい便や、赤黒い便)
  • 腹痛、腹部の張り
  • 体重減少、貧血

このように、一見似ている症状でも、その背後にある原因は大きく異なることがわかります。正確な診断のためには、専門医による診察が不可欠です。

病気 主な原因 代表的な症状
肛門周辺の血管のうっ血・傷 排便時の痛み、鮮血、腫れ
大腸がん 大腸粘膜のポリープなどの悪性化 便通異常、血便(黒っぽい)、腹痛、体重減少

検査方法による大腸 が ん と 痔 の 違い

大腸がんの検査には、内視鏡検査(大腸カメラ)が非常に有効です。大腸カメラでは、カメラを肛門から挿入し、大腸の内部を直接観察することができます。これにより、ポリープやがんの有無、大きさ、場所などを正確に把握できます。もしポリープが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。

一方、痔の診断は、問診や視診、触診、そして場合によっては肛門鏡を使った検査で行われることが多いです。大腸カメラほど詳細な検査が必要ない場合もありますが、症状が重い場合や、疑わしい所見がある場合は、大腸がんとの鑑別のためにも大腸カメラによる検査が推奨されることがあります。

  1. 問診・視診・触診
  2. 肛門鏡検査
  3. 大腸内視鏡検査(必要に応じて)

特に、40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても定期的な大腸がん検診を受けることが推奨されています。検診では、便潜血検査が行われますが、これはあくまでスクリーニング検査であり、陽性だった場合は必ず大腸カメラでの精密検査が必要です。

治療法から見る大腸 が ん と 痔 の 違い

治療法も、大腸がんと痔では大きく異なります。痔の治療は、症状の程度によって保存的治療(薬物療法、生活習慣の改善)や、手術療法(痔核切除術、根治手術など)があります。生活習慣の改善、特に食生活の見直しや適度な運動は、痔の予防や悪化を防ぐ上で非常に大切です。

大腸がんの治療は、がんの進行度によって手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法などを組み合わせて行われます。早期発見できた場合は、内視鏡治療で根治できることもあります。進行がんの場合は、手術でがんを取り除き、再発予防のために抗がん剤治療を行うのが一般的です。

重要なのは、自己判断で放置しないことです。

  • 薬局で買った市販薬で様子を見てしまう
  • 「痔だろう」と思い込み、病院に行くのをためらってしまう

このような行動は、大腸がんの発見を遅らせてしまう可能性があります。

リスク要因から見た大腸 が ん と 痔 の 違い

大腸がんのリスク要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 50歳以上の年齢
  • 大腸がんや大腸ポリープの既往歴
  • 家族に大腸がんの人がいる
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
  • 過度の飲酒、喫煙
  • 肉類や脂肪分の多い食事、食物繊維の少ない食事
  • 肥満、運動不足

一方、痔のリスク要因としては、以下のようなものが関係しています。

  1. 便秘や下痢を繰り返す
  2. 長時間の座位(座っていること)
  3. 妊娠・出産
  4. 肥満
  5. アルコールの過剰摂取

このように、食生活や生活習慣が両方の病気に関係していることもありますが、遺伝的要因や炎症性疾患などは、より大腸がんと強く関連しています。

予防策から見た大腸 が ん と 痔 の 違い

大腸がんの予防には、バランスの取れた食生活が重要です。特に、食物繊維を豊富に含む野菜や果物を積極的に摂り、赤肉や加工肉の摂取を控えめにすることが推奨されます。また、適度な運動習慣は、肥満予防にもつながり、大腸がんのリスクを低減します。

痔の予防には、便秘や下痢にならないように、規則正しい食生活と十分な水分摂取が大切です。排便を我慢しないことも重要です。また、長時間座りっぱなしの姿勢を避け、適度に体を動かすことも効果的です。

病気 主な予防策
大腸がん バランスの取れた食事(食物繊維豊富、肉・脂肪控えめ)、適度な運動、禁煙・節酒
規則正しい食生活、十分な水分補給、排便を我慢しない、長時間同じ姿勢を避ける

どちらの病気にも共通して言えるのは、健康的な生活習慣が大切であるということです。

専門医への相談のタイミング

「血便が出た」「お尻の調子がいつもと違う」と感じたら、まずは専門医(消化器内科医や肛門科医)に相談することが大切です。特に、以下のような場合は、早めに受診しましょう。

  • 便に血が混じることが続く
  • 便の形が変わった(細くなった、コロコロになった)
  • お腹の調子がずっと悪い(便秘や下痢が続く)
  • 体重が理由なく減ってきた
  • 以前よりも疲れやすくなった(貧血の可能性)

痔だと思っていても、実は大腸がんだったというケースは少なくありません。早期発見が治療の成功率を大きく左右するため、不安を感じたら迷わず医療機関を受診してください。医師は、症状や病歴を聞き、適切な検査を行い、正確な診断をしてくれます。

「大腸 が ん と 痔 の 違い」を理解し、ご自身の体の変化に注意を払うことが、健康維持への第一歩です。定期的な健康診断を受け、気になる症状があれば、ためらわずに専門医に相談しましょう。

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