「癌(がん)」と「ポリープ」。この二つの言葉、なんとなく聞いたことはあるけれど、具体的にどう違うの?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。実は、癌とポリープの違いを正しく理解することは、健康を守る上でとても大切です。簡単に言うと、ポリープは良性のものもあれば、癌に進行する可能性のあるものも含まれる、粘膜から飛び出した「できもの」の総称です。一方、癌は悪性腫瘍のことで、周囲の組織に侵入したり、他の臓器に転移したりする性質を持っています。この癌とポリープの違いを、これから詳しく見ていきましょう。

ポリープは「できもの」、癌は「悪くなるできもの」

ポリープというのは、体の内側の粘膜にできる「できもの」全般を指す言葉です。例えば、お腹の中の臓器(胃や腸など)や、鼻、喉などにできることがあります。ポリープの多くは良性で、特に問題なくそのまま経過観察されることも少なくありません。しかし、一部のポリープは、時間をかけて癌に変化していくことがあるのです。この「癌に変化する可能性がある」という点が、ポリープと癌を区別する上で非常に重要なポイントとなります。

  • ポリープの主な特徴
    • 粘膜から飛び出した「できもの」
    • 良性のものが多い
    • 一部は癌に進行する可能性がある
  • 癌の主な特徴
    1. 悪性腫瘍
    2. 周囲の組織に広がる(浸潤)
    3. 他の臓器に広がる(転移)

癌とポリープの違いを理解することは、早期発見・早期治療のために、何よりも重要です。

項目 ポリープ
性質 良性〜前癌病変(癌になる可能性あり) 悪性
広がり方 通常、周囲に広がらない(※癌化した場合を除く) 周囲に広がり、転移する可能性がある

ポリープの種類と癌化のリスク

ポリープと一口に言っても、その種類は様々です。例えば、大腸にできるポリープには、腺腫(せんしゅ)や過形成ポリープ(かけいせいポリープ)などがあります。この腺腫ポリープというのが、癌化しやすいタイプとして知られています。過形成ポリープは、基本的に癌化しないと考えられています。このように、ポリープの種類によって、癌になるリスクが大きく異なるのです。

癌化するまでの時間は、ポリープの種類や大きさ、場所にもよりますが、一般的には数年から十数年かけてゆっくりと進行すると言われています。そのため、定期的な検査でポリープを見つけて、必要であれば取り除いておくことが、癌の予防につながるのです。

  1. 腺腫ポリープ :癌化しやすいタイプ。数ミリ程度のものから数センチになるものまで様々。
  2. 過形成ポリープ :基本的に癌化しないタイプ。
  3. 炎症性ポリープ :炎症が原因でできるポリープ。

「どのポリープが危険なのか?」という見極めは、医師の専門的な知識と経験が必要です。自己判断せず、専門医の診断を受けることが大切です。

癌への進行:ポリープが癌になるプロセス

ポリープが癌になるプロセスは、細胞の遺伝子に変化が起こることから始まります。粘膜の細胞が正常な状態から、少しずつ異常な細胞へと変化していくのです。この異常な細胞が増殖し、やがて周囲の組織に広がり始めると、それは癌と診断されるようになります。

この変化は、以下のような段階を経て進むと考えられています。

  • 正常な粘膜細胞
  • 軽度異型(けいどいけい)→ 中等度異型(ちゅうとうどいけい)→ 高度異型(こうどいけい)
  • 早期癌(そうきがん)
  • 進行癌(しんこうがん)

「異型」というのは、細胞の形や性質が少しずつおかしくなっていく状態を指します。この異型が進行していくと、最終的に癌になるわけです。

ポリープと癌の診断方法

ポリープや癌の診断は、主に内視鏡検査(カメラを使った検査)によって行われます。胃カメラや大腸カメラなどで、体の内部を直接観察し、異常な部分がないかを確認します。

内視鏡検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除(取り除くこと)することもあります。切除したポリープは、病理検査(顕微鏡で詳しく調べる検査)に提出され、それが良性なのか、癌化する可能性のあるものなのか、あるいはすでに癌になっているのかなどが詳しく調べられます。

検査方法には、以下のようなものがあります。

検査方法 観察できる部位 特徴
内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ) 食道、胃、十二指腸、大腸など 直接観察し、ポリープの発見、切除が可能。病理検査に繋がる。
CT検査、MRI検査 全身 体の内部を断層撮影。癌の広がりや転移の有無などを調べるのに役立つ。
腫瘍マーカー検査 血液 癌の種類によって体内で作られる物質を調べる。補助的な診断に用いられる。

どの検査が適切かは、症状や疑われる病気によって異なります。

ポリープと癌の治療法

ポリープや癌の治療法は、その種類、大きさ、進行度、そして患者さんの状態によって大きく変わってきます。良性のポリープであれば、特に治療せず経過観察となることも多いです。しかし、癌化する可能性のあるポリープや、すでに癌と診断された場合には、治療が必要となります。

主な治療法としては、以下のようなものがあります。

  • 内視鏡的切除 :内視鏡を使ってポリープや早期の癌を切り取る方法。身体への負担が少ない。
  • 手術療法 :病変のある部分を切除する外科的な手術。
  • 化学療法(抗がん剤治療) :薬を使って癌細胞を攻撃する方法。
  • 放射線療法 :放射線を使って癌細胞を死滅させる方法。
  • 免疫療法 :体の免疫の力を使って癌と戦う方法。

治療方針は、医師と患者さんがよく話し合って決定されます。

ポリープや癌の予防と早期発見のために

ポリープや癌を完全に予防することは難しいかもしれませんが、リスクを減らすための生活習慣はあります。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒などが大切です。

そして何よりも重要なのが、定期的な健康診断やがん検診を受けることです。特に、大腸ポリープや大腸がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないため、検診で早期に発見することが非常に有効です。早期に発見できれば、治療による完治の可能性も高まります。

  1. 食生活を見直す :野菜や果物を積極的に摂り、肉類や加工食品の摂取を控える。
  2. 適度な運動を習慣にする :週に数回、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れる。
  3. 禁煙・節酒を心がける :喫煙や過度の飲酒は、様々な癌のリスクを高めます。
  4. 定期的な検診を受ける :自覚症状がなくても、定期的に健康診断やがん検診を受けましょう。

「癌とポリープの違い」を理解し、日頃から健康に気を配り、定期的な検診を受けることが、健康寿命を延ばすための鍵となります。

癌とポリープの違いについて、ご理解いただけましたでしょうか。ポリープは、癌の「前段階」とも言える存在であり、早期に発見して適切に対処することで、癌への進行を防ぐことができる場合が多いのです。日頃からご自身の体の変化に注意を払い、気になることがあれば、迷わず専門医に相談してください。健康な毎日を送るために、正しい知識と意識を持つことが何よりも大切です。

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