「ものもらい」と「ヘルペス」、どちらも目の周りにできると心配になりますよね。でも、実はこの二つは原因も症状も全く異なるもの。 ものもらい と ヘルペス の 違い を正しく理解することは、適切な対処をする上で非常に重要です。
1. 原因と病原体の違い:細菌かウイルスか?
ものもらいとヘルペスの根本的な違いは、その原因となる病原体にあります。ものもらいは、主に細菌感染によって引き起こされる炎症です。まつ毛の毛根やマイボーム腺という油を出す腺に細菌が入り込み、そこで増殖することで炎症が起こります。
一方、ヘルペスはウイルス、特に単純ヘルペスウイルスの感染によって起こります。このウイルスは一度感染すると体の中に潜伏し、免疫力が低下した時などに再活性化して症状を引き起こします。目の周りにできるヘルペスは、単純ヘルペス1型であることがほとんどです。
この原因の違いは、治療法にも大きく影響します。ものもらいは抗生物質で細菌を退治しますが、ヘルペスは抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑える治療が中心となります。症状の進行を抑えるためには、 原因を正しく特定することが何よりも大切 です。
2. 症状の現れ方の違い:できる場所と見た目
ものもらいとヘルペスでは、症状の現れ方にも明確な違いがあります。ものもらいは、まぶたの縁に赤みや腫れ、痛みが生じることが特徴です。膿(うみ)が溜まることもあり、見た目にはニキビのように見えることもあります。
- ものもらいの主な症状:
- まぶたの腫れ、赤み
- 痛み(押すと痛むことが多い)
- 異物感
- 涙目
- 稀に、まぶたに膿(うみ)の袋ができる
対して、ヘルペスは、目の周りに小さな水ぶくれ(水疱)がたくさんできるのが特徴です。この水ぶくれは次第に破れてただれ、痛みを伴います。ものもらいのように膿の袋ができるというよりは、ジクジクとしたただれになることが多いです。また、ヘルペスは神経に沿って広がる性質があるため、顔の片側に症状が出やすい傾向があります。
3. 痛みの種類と強さの違い
痛みについても、両者には違いが見られます。ものもらいの痛みは、炎症が起きている部分の圧迫感や、触るとズキズキするような痛みであることが多いです。腫れがひどくなると、ズキズキとした拍動性の痛みを感じることもあります。
| ものもらいの痛み | 圧迫感、押すと痛む、ズキズキとした痛み |
|---|---|
| ヘルペスの痛み | チクチク、ピリピリとした神経痛のような痛み、灼熱感 |
ヘルペスの痛みは、神経に沿って起こるため、チクチクとしたり、ピリピリとしたりするような、いわゆる「神経痛」に近い痛みが特徴です。場合によっては、焼けるような熱さを感じることもあります。 痛みの質や感じ方の違い も、自己判断のヒントになります。
4. 進行と合併症の違い
ものもらいは、適切な処置をすれば数日から1週間程度で改善することが多いですが、まれに症状が悪化して麦粒腫(ばくりゅうしゅ)や霰粒腫(さんりゅうしゅ)といった、より大きな炎症になることもあります。放置すると、まぶたの腫れがひどくなり、視界を妨げることもあります。
- ものもらいの合併症:
- 霰粒腫(さんりゅうしゅ):マイボーム腺の詰まりでできるしこり
- 眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん):まぶたの奥の組織にまで炎症が広がる重症な状態(稀)
ヘルペスの場合、特に注意したいのは目の角膜にウイルスが感染してしまう「ヘルペス角膜炎」です。これは視力低下や失明につながる可能性もある非常に危険な合併症です。そのため、目の周りにヘルペスの症状が出た場合は、 自己判断せずにすぐに眼科を受診することが絶対条件 となります。
5. 感染力と予防法の違い
ものもらいは、細菌感染なので、直接的な接触や、タオルなどを介して感染する可能性があります。ただし、過度に心配する必要はありません。日頃から手を清潔に保ち、目をこすらないようにするなどの基本的な衛生管理が大切です。
- ものもらいの予防法:
- 手をこまめに洗う
- 目を触る前に手を清潔にする
- メイク用品を清潔に保つ
- コンタクトレンズの衛生管理を徹底する
ヘルペスは、水ぶくれの中の体液にウイルスが含まれているため、水ぶくれに直接触れたり、唾液などを介して感染する可能性があります。一度感染すると体内に潜伏するため、完全に予防することは難しいですが、ストレスを溜めない、十分な睡眠をとるなど、 免疫力を高く保つことが再発予防 につながります。
6. 治療法の違い:薬の種類とアプローチ
ものもらいの治療は、原因菌を殺すための抗生物質の点眼薬や内服薬が中心となります。炎症を抑えるためにステロイドが処方されることもあります。化膿がひどい場合は、切開して膿を出す処置が必要になることもあります。
| ものもらいの治療 | 抗生物質(点眼・内服)、場合によりステロイド、切開排膿 |
|---|---|
| ヘルペスの治療 | 抗ウイルス薬(点眼・内服)、場合によりステロイド、角膜移植(重症の場合) |
ヘルペスの治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が主体となります。目の症状が重い場合や角膜に影響が出ている場合は、抗ウイルス薬の点眼薬や、場合によってはステロイドの点眼薬も使用されます。重症な角膜ヘルペスでは、視力回復のために角膜移植が必要になることもあります。
7. 受診すべき診療科の違い
どちらの症状も、まずは眼科を受診するのが基本です。眼科医が問診や検査を行い、ものもらいなのか、ヘルペスなのか、あるいは他の病気なのかを正確に診断してくれます。
- ものもらいの場合:
- 初期段階であれば、眼科で適切な点眼薬や内服薬を処方してもらうことで、数日で改善することが多いです。
- 症状が長引いたり、悪化したりする場合は、眼科医の指示に従って治療を続けましょう。
ヘルペスの場合は、初期の適切な診断と治療が非常に重要です。特に目の周りに水ぶくれができている場合は、 迷わずすぐに眼科を受診 してください。皮膚科でもヘルペスの治療は可能ですが、目の合併症のリスクを考えると、まずは眼科での診察が最優先です。
このように、「ものもらい」と「ヘルペス」は、原因、症状、治療法、そして注意すべき合併症など、多くの点で違いがあります。目の周りに異変を感じたら、自己判断せずに、まずは眼科医の診察を受けることが、早期回復への一番の近道です。