「DNR と DNR の 違い」について、気になっている方も多いのではないでしょうか?実は、この二つは似ているようで、それぞれ異なる意味と役割を持っています。今回は、この二つの違いを分かりやすく、そして丁寧に解説していきます。

DNRとDNR:何が違うの?

まず、DNRとは「Do Not Resuscitate」の略で、日本語では「心肺蘇生法拒否」と訳されます。これは、心停止などの状況に陥った際に、人工心肺蘇生法(CPR)などの蘇生処置を行わないことを、あらかじめ本人が意思表示することです。つまり、延命措置を望まないという意思を明確に伝えるためのものです。

一方、DNRのさらに進んだ形、あるいは文脈によって別の意味合いを持つものとして、DNR(Do Not Resuscitate)とDNR(Do Not Attempt Resuscitation)という表記が混在することがあります。しかし、一般的には「DNR」という言葉で心肺蘇生法を拒否する意思表示を指すことが多いです。もし「DNR」と「DNR」で区別される場合、それは以下のようなニュアンスの違いを持つことがあります。

  • DNR (Do Not Resuscitate): 心肺蘇生法を「行わない」という意思表示。
  • DNR (Do Not Attempt Resuscitation): 心肺蘇生法を「試みない」という意思表示。

この意思表示の明確さは、患者さんの尊厳を守る上で非常に重要です。 状況によっては、医療従事者が「試みるべきか、試みないべきか」と迷う場面が出てきます。それを避けるために、よりはっきりと「試みない」という意思を伝えることで、医療従事者の負担も軽減され、患者さんの意向がより確実に尊重されることになります。

具体的に、どのような状況でこの意思表示がなされるのか、いくつか例を挙げてみましょう。

  1. 重篤な病状で回復の見込みがなく、苦痛を長引かせたくない場合。
  2. 人生の最終段階を自宅や緩和ケア病棟で穏やかに過ごしたいと希望する場合。
  3. 過去の経験から、蘇生処置が自身の望む医療ではないと判断した場合。
用語 意味 主な目的
DNR (Do Not Resuscitate) 心肺蘇生法拒否 延命措置の拒否
DNR (Do Not Attempt Resuscitation) 心肺蘇生法不試行 確実な蘇生処置の回避

DNR が示す「最期の願い」

DNR は、単に医療行為を拒否することだけを意味するのではありません。これは、患者さん一人ひとりが持つ「最期の願い」や「人生観」を尊重するための、非常に重要な意思表示です。

たとえば、以下のような状況が考えられます。

  • 「もう十分生きたから、これ以上苦しみたくない。」
  • 「家族に迷惑をかけたくない。」
  • 「自分らしく、穏やかな最期を迎えたい。」

これらの願いは、医療従事者にとって、患者さんの QOL(Quality of Life:生活の質)を最大限に尊重するための貴重な情報となります。DNR という意思表示は、単なる医療行為の停止ではなく、患者さんの人生そのものに対する敬意の表れでもあるのです。

DNR をどのように意思表示するかは、いくつかの方法があります。

  • リビング・ウィル(Advance Directive): 事前に書面で意思表示をしておく方法です。
  • 家族への伝達: 信頼できる家族に自分の意思を伝え、代わりに伝えてもらう方法です。
  • 医療従事者との話し合い: 医師や看護師と直接話し合い、意思を共有する方法です。
  • DNR と医療従事者の役割

    DNR という意思表示があった場合、医療従事者はその意思を尊重し、適切な医療を提供することが求められます。これは、患者さんの権利を守る上で、非常に重要な責務です。

    医療従事者の役割は、以下のようになります。

    • 患者さんの意思の確認: DNR の意思が明確であるか、そしてその背景にある思いを丁寧に聞き取ります。
    • 家族との連携: 患者さんの意思を家族にも理解してもらい、共有します。
    • 適切なケアの提供: DNR があっても、苦痛の緩和や精神的なケアなど、患者さんの QOL を維持するための医療は継続して提供します。

    DNR は、医療従事者にとって、患者さんの「最期」にどう向き合うべきかを考える上での羅針盤となるものです。 医療従事者は、蘇生処置を行わないという意思を尊重しつつも、患者さんが尊厳を保ち、安らかな最期を迎えられるよう、最大限のサポートを行います。

    DNR に関して、医療従事者は以下の点に注意する必要があります。

    1. 書面での意思表示がない場合でも、患者さんの言動から意思を推察し、慎重に対応する。
    2. 家族の意向と患者さんの意思が異なる場合は、患者さんの意思を最優先する。
    3. DNR の意思表示をされた患者さんに対しても、人間としての尊厳を失わないようなケアを心がける。

    DNR 実施のタイミングと注意点

    DNR の意思表示は、いつでも有効ですが、実際に蘇生処置が行われるかどうかは、その時の状況によって判断されます。そして、その判断にはいくつかの注意点があります。

    注意すべき点は以下の通りです。

    • 「心肺停止」という状況: DNR は、心臓が止まり、呼吸も停止した「心肺停止」という状態になった場合に適用されます。
    • 意思の確認: 意識がない場合でも、事前に明確な意思表示があった場合は、その意思が尊重されます。
    • 蘇生処置以外の医療: DNR は、あくまで心肺蘇生法などの「蘇生処置」を拒否するものであり、それ以外の治療やケアを拒否するものではありません。

    DNR を実施する上で、医療従事者は常に以下のことを意識する必要があります。

    1. 患者さんの苦痛を最小限にするための配慮を行う。
    2. 家族への十分な説明と精神的なサポートを行う。
    3. 患者さんの状態を常に注意深く観察し、必要に応じてケアを調整する。

    DNR と終末期医療

    DNR は、終末期医療(人生の最終段階における医療)において、非常に重要な位置を占めます。終末期医療の目的は、延命そのものよりも、患者さんの QOL を最大限に高め、穏やかな最期を迎えられるようにすることだからです。

    終末期医療における DNR の役割は、以下の通りです。

    • 患者さんの意思の尊重: 終末期においては、患者さん自身の意思が最も重要視されます。DNR は、その意思を明確に伝える手段です。
    • 家族の負担軽減: 延命処置を巡る家族の葛藤や精神的な負担を軽減する助けにもなります。
    • 医療資源の有効活用: 回復の見込みが少ない患者さんへの過剰な延命処置を避け、限られた医療資源をより必要としている患者さんに振り向けることも可能になります。

    終末期医療における DNR の決定プロセスは、以下のように進められることが多いです。

    1. 患者さん本人(意思表示が可能な場合)や家族との十分な話し合い。
    2. 主治医や看護師、ソーシャルワーカーなど、多職種でのカンファレンス。
    3. 必要に応じて、倫理委員会などでの検討。

    DNR 以外の選択肢

    DNR は、心肺蘇生法を拒否する意思表示ですが、終末期医療には DNR 以外にも様々な選択肢があります。患者さんの状況や希望に応じて、これらを組み合わせて考えることも重要です。

    例えば、以下のような選択肢が考えられます。

    • 緩和ケア: 痛みの緩和や精神的なサポートなどを中心としたケアです。
    • 終末期延命治療の拒否: 人工呼吸器や輸血、人工栄養などの延命治療を拒否すること。
    • 人工呼吸器の拒否: 人工呼吸器を装着しない、あるいは外すことを希望すること。
    • 尊厳死・安楽死: これは、国や地域によって法的な位置づけが異なります。

    DNR の意思表示をする際には、これらの他の選択肢についても理解を深めておくことが大切です。 自分の望む最期を、より具体的にイメージするためにも、様々な情報に触れることをお勧めします。

    終末期医療において、患者さんや家族が意思決定をする際のポイントは以下の通りです。

    1. 病状や治療法の選択肢について、医療従事者から十分な説明を受ける。
    2. 自分や家族の価値観や希望を正直に伝える。
    3. 納得がいくまで、何度でも話し合いを重ねる。

    まとめ

    DNR と DNR の違い、そしてその重要性について、ご理解いただけたでしょうか? DNR は、患者さんがご自身の人生の最期をどのように迎えたいかという、非常に個人的で大切な意思表示です。この意思表示を尊重し、患者さん一人ひとりの尊厳を守ることが、医療従事者、そして私たち一人ひとりに求められています。

    Related Articles: