「変異株」と「変異種」、最近よく聞く言葉だけど、一体何が違うの?実は、この二つの言葉、意味合いは似ているようで少し違うんです。今回は、この「変異株と変異種の違い」を、難しくないように、分かりやすく解説していきますね。

「変異株」と「変異種」の基本的な違い

まず、一番大きな違いは、どのレベルで「変化」が起きているか、ということです。「変異株」というのは、主にウイルスの「株」の違いを指します。ウイルスは、私たち人間と同じように、 DNAやRNAといった遺伝情報を持っています。この遺伝情報が少しずつ変わっていくことを「変異」と呼びます。この変異が積み重なって、元のウイルスとは少し違う特徴を持ったものを「変異株」と呼ぶんです。

一方、「変異種」は、もっと広い意味で使われることがあります。生物全体で見ると、遺伝子の変化によって、元の種とは明らかに違う特徴を持った新しい「種」のようなものが生まれた場合に使われることがあります。例えば、犬種がたくさんいるように、同じ犬という種の中でも、見た目や性質が大きく違うものがいますよね。あれも、長い時間をかけた遺伝子の変化の結果と言えます。ただし、ウイルスの文脈では、「変異株」とほぼ同じ意味で使われることも多いので、文脈によって判断することが大切です。

つまり、ウイルスの話をしているときは、「変異株」がより一般的で正確な表現であることが多いですが、「変異種」という言葉も、そのウイルスの特徴が大きく変わったものを指す際に使われることがある、と覚えておくと良いでしょう。

  • 変異株:ウイルスの遺伝子変異による、特定の「株」の違い
  • 変異種:より広い意味で、遺伝子変化による新しい「種」のようなもの(ウイルスの文脈では変異株とほぼ同義で使われることも)

ウイルスの「変異」ってどういうこと?

ウイルスは、自分自身のコピーをたくさん作る(増殖する)ときに、たまに「書き間違い」のようなものをしてしまうことがあります。これが「変異」です。この書き間違いは、ごくたまにしか起こりませんが、ウイルスはものすごいスピードで増殖するので、たくさんの変異が生まれることがあります。

この変異の多くは、ウイルスの性質にほとんど影響を与えません。ですが、中にはウイルスの「トゲ」の部分(スパイクタンパク質など)の形を変えてしまったり、ウイルスの増殖スピードを速くしたり、私たちの免疫から逃げやすくなったりするなど、目に見える変化をもたらすものもあります。

こうした、ウイルスの「振る舞い」に影響を与えるような変異が起きたものを、私たちは「変異株」と呼んで、特に注目しているわけです。

例えば、新型コロナウイルスでも、最初は「アルファ株」や「デルタ株」など、次々と新しい「株」が登場してきましたよね。これらは、元のウイルスから遺伝子に変異が起きて、感染力や病原性が変わったものとして、それぞれ名前がつけられていました。

「株」と「種」の、さらに詳しい違い

生物学では、「種」というのは、お互いに交配して子孫を残せる生物の集まりを指します。例えば、人間は人間という「種」です。犬も犬という「種」です。

一方、「株」というのは、同じ「種」の中でも、遺伝子の特徴や性質が少しだけ違うグループのことです。よく「株」が使われるのは、細菌やウイルス、そして植物の品種改良などの文脈です。

例えば、インフルエンザウイルスは、毎年少しずつ「株」が変わります。だから、毎年新しいワクチンが必要になるんですね。これも、ウイルスの遺伝子が少しずつ変異して、免疫が効きにくくなる「株」が出てくるからです。

ですから、ウイルスの文脈で「変異株」という場合、それは「元のウイルスの種は同じだけど、遺伝子の変化によって、感染力や重症度などが変わった、新しいグループ」という意味合いが強いのです。

用語 意味合い
種 (Species) お互いに交配して子孫を残せる生物の集まり
株 (Strain) 同じ種の中でも、遺伝子の特徴や性質が少し違うグループ

なぜ「変異」が起こるの?

ウイルスが変異を起こす主な理由は、その「増殖の仕組み」にあります。ウイルスは、自分自身の遺伝情報(DNAやRNA)をコピーして、新しいウイルスを作り出します。このコピー作業は、人間の細胞と比べて非常にシンプルで、たまに「ミス」が起こりやすいのです。

このミスが、遺伝情報の一部が書き換わったり、順番が変わったり、抜け落ちたりする「変異」となります。

さらに、ウイルスの種類によっては、増殖する際に「遺伝子の組み換え」を起こすこともあります。これは、複数のウイルスが混ざり合って、新しい遺伝情報の組み合わせが生まれる現象です。これも、結果的に新しい性質を持つウイルスを生み出す要因になります。

「変異」は、ウイルスが生き残るための戦略とも言えます。環境の変化に対応したり、宿主(私たち人間など)の免疫から逃れたりするために、有利な変異を持ったウイルスが生き残りやすくなるのです。

変異株・変異種がもたらす影響

「変異株」や「変異種」が登場すると、私たちにとって様々な影響が出てくる可能性があります。

  1. 感染力の変化: ウイルスの「トゲ」の形が変わると、私たちの細胞に結合しやすくなり、より多くの人に感染しやすくなることがあります。
  2. 病原性の変化: 重症化しやすくなったり、逆に軽症で済むようになったり、症状の出方が変わることもあります。
  3. ワクチンの効果: ワクチンは、ウイルスの特定の「トゲ」などを目印に免疫を作ります。変異によって「トゲ」の形が変わると、ワクチンの効果が弱まる可能性があります。
  4. 治療薬の効果: 治療薬も、ウイルスの特定の働きを抑えるように作られています。変異によってその働き方が変わると、薬が効きにくくなることも考えられます。

「変異株」と「変異種」の使い分け

専門家やメディアでは、ウイルスの遺伝子解析の結果に基づいて、明確な違いがある場合に「変異株」という言葉を厳密に使います。例えば、新型コロナウイルスの場合、「アルファ株」「ベータ株」「ガンマ株」のように、世界保健機関(WHO)などがギリシャ文字で命名したものが「変異株」です。

一方、「変異種」という言葉は、学術的な定義が曖昧な場合や、一般の人に分かりやすく説明する際に、より広範な意味で使われることがあります。例えば、「新しい、危険な変異種が出現した」といったニュースで耳にすることがあるかもしれません。

重要なのは、どちらの言葉が使われていても、ウイルスの性質が変化し、感染症の流行に影響を与える可能性がある、という点に注意を払うことです。

まとめ:言葉のニュアンスを理解しよう!

これまで見てきたように、「変異株」と「変異種」は、似ているようで少しニュアンスが異なります。ウイルスの文脈では、「変異株」がより正確で、遺伝子変異によって性質が変わった特定のグループを指します。「変異種」は、より広い意味で使われることがありますが、ウイルスの場合は「変異株」とほぼ同義で使われることも多いです。

どちらの言葉も、私たちの健康や社会に影響を与える可能性のある、ウイルスの変化について語っている言葉です。言葉の正確な意味を知っておくと、ニュースなどで情報を得る際に、より深く理解できるようになるでしょう。

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